2010年8月のxpressjapan

日本国内のオフロードモーターサイクルスポーツの動画コンテンツを企画制作無料公開するプロジェクト「xpressjapan」は2009年2月に始動しました。

対象はMFJ全日本モトクロス、MFJ全日本エンデューロ、JNCC全日本クロスカントリーエンデューロ選手権の3シリーズを中心に月2作品程度のペースで「可能な限り早く公開する」ことで、ユーザーに対してリアルタイムに近い情報提供を行い、ファンのみなさんに興味と関心を持続してもらい、ライダーやチームにもメディアに露出する機会を作ることで、今後のレース活動を継続する上でのアピールの場となることを旨としています。

低迷が続く日本のレース業界、と言われて久しいものの、取材活動を通じて見えてくるものは、ライダーもチームスタッフもマシンメーカーやパーツメーカー・商社の人、もちろんメディアの人も、そしてなによりもお客さんが「みんな本当に好きなんだな」ということです。

確かに、かつてのブームの時期よりはるかに競技人口も減り、ワークスチームの縮小、一般メディアへの露出の現象そして観客動員の現象もあります。
それでも皆それぞれの立場で情熱を注ぐ「時」と「空間」であるモトクロスコース、あるいはエンデューロもしくはトライアル会場に集い、また日常に戻っていくことを習慣としているのです。
xpressjapan.comのタイトルに書かれた「with your dirtbike life」は、そんなみなさんのお役に立ちつつ弊社スタッフの創造性を高め、表現する場として、またインターネットを利用したコンテンツビジネスのあり方を探求するチャレンジでありたい、という願いを込めています。

という志はともかく、有効なビジネスモデルを確立できないまま2年目のシーズン終盤にさしかかり、今後の方針を見極める必要が出てきました。そこで、今のxpressjapanを以下に書き出してみました。


>>制作コンセプト
2004年9月にwestendfilmsとして全日本モトクロスのオリジナルDVD制作を開始した時から一貫しているのは「リアル・モトクロス」です。
現地で見られなかった人が見てもレース展開と雰囲気が伝わることをメインテーマに掲げ、その点が一部の根強いファンのみなさんに評価されて今に至っています。
日本国内のレースを対象にしたオリジナルDVD制作販売は営業的に成功したとは言えませんでした。これは作品のクオリティが多くの視聴者にとって満足していただけるレベルになかったことを意味していますが、xpressjapanとしてネット配信限定に移行したことで基本路線を踏襲しつつも海外のコンテンツから多くのものを学び、それを大和魂という言葉の原義である和魂漢才をもって作品に新しいテイストを加えつつ「最新作が最高傑作」を目標にこのプロジェクトが存在する限り発展させていきます。


>>xpressjapan.com
映像作品を公開するにあたってはYoutubeなどの動画共有サービスを利用して公開およびデータ管理することでコストを限りなくゼロに近づけるだけでなく各サービスの検索機能により、多くの人がアクセスする機会を広げています。
その基本方針のなかで独自ドメインxpressjapan.comをホームページとして運営しています。
当初の計画ではこのサイトを中心に展開する構想でしたが、実際はひとつの新作コンテンツが公開されると、まずdirtnpをはじめとするニュースサイトからのアクセスが公開当初は多く、その後各動画共有サービス内の検索や関連動画からのアクセスが増えていくことが判りました。
そこで現在では公開中の全てのコンテンツのプレーヤー画面をここで集約、整理することが主目的となっています。
現在の平均ユニークアクセスは200人/日前後であり、当初期待していたxpressjapan.com訪問者に対する広告効果は「望み薄」という状況から、今後の映像コンテンツ以外の展開も視野に入れてプロジェクトを推進していくことになるでしょう。



>>運営体制
1:スタッフ
2010年8月20日現在、全業務を専任でクロダキカク・黒田正美が行っています。
各イベントの日程によっては撮影を外注することもあります。
今後のプロジェクトの発展に伴い、必要に応じて人員の補充および教育を行いサービスの品質向上と安定を図ります。



2:制作・企画
xpressjapanではMFJ公認競技もしくは承認競技を中心にムービーレポートしているため、主催者であるMFJ本部、各協力団体、各イベント主催者の取材許可により企画が成立したうえで遂行されています。
そのためシーズン前にMFJおよびスポーツランドSUGOに社名:クロダキカク/媒体:xpressjapanとして年間プレス登録しています。もちろんMFJ関連以外の各イベントも同様に事前取材申請を行い、了承された後に撮影しています。
前述のようにレースシーンを収録することがメインテーマですが、「ヒトはヒトに最も興味を持つ」という原則に則り、現地入りの前に各イベントごとにピックアップするライダーや、その他のレースに関わる人々を決め、事前情報を収集して撮影取材に臨みます。


3.撮影
全スタッフが1名であるため、イベント前日にコースと会場のロケーションハンティング(ロケハン)をアポイントおよびインタビューなどの合間に行います。
メインイベント当日はロケハンのイメージをベースに、その瞬間のインスピレーションに従って撮影してしています。
「常に変化する状況を予測しつつストーリーを組み立てながらポジション移動して、確実に使える素材を収録する」という取り直しのできない一発勝負の緊張感は、ノルディックスキーのバイアスロンを彷彿させるものです。
そして、今シーズンより従来のHDVカムコーダーに加え、民生機ながらメモリーレコーディングシステムを導入しました。これによりテープの残り時間を気にせずに固定カメラとしての活用し、一人で2台のカメラ運用をするスタイルを確立しつつあります。その成果は第1戦IA2heat1のスタートシーンでさっそく発揮され、小島太久摩のマトリックス張りのアクションを全て収めており、最小構成で最大の成果を上げることができました。
また、限りある時間内により多くの素材を撮影するためにはポジション間の移動を迅速に行う必要があり、それをレースの数だけこなす体力が不可欠でした。この点でも一昨年よりほぼ毎日続けてきたジョギングの成果が現れており、熱中症対策にもなっています。



4.編集
イベント開催日の即日公開を掲げているため、SUGO・藤沢ではプレスセンター、その他では車内、あるいは完成データの送信をかねてネットカフェで編集作業を行っています。
モトクロスの場合、いままでIA1/2それぞれ2ヒートのハイライトを制作していましたが、今年8月よりYoutubeの制限時間が15分になったため、今後は両方をまとめて一つの作品として公開することも可能です。しかし編集時間そのものはあまり変わらない、もしくは若干伸びる可能性もあります。
イベント単位のハイライト版では両クラスの映像、リザルト素材を整えてカット編集後、時間内に収めた上で精査してBGMを付け、さらにチェックして編集データからアップロード用の元データに出力して、さらに必要に応じて送信時間を短縮するための圧縮エンコードというプロセスそのものに変わりはないものの、完成までの時間が多くかかることは必至です。
もちろん今まで通りにIA1/2を分けることも有りですが、来年より実施されることがほぼ決まっているIA SHOOT OUTの対応への予行演習と、より高きを目指した作品構成への挑戦が必要な時期でもあります。
速報以外の作品は本社作業場にてトライアンドエラーを十分な時間をかけて行えるため技術的な向上を図っており、これらはシーズンオフに予定している総集編にも”最新作が最高傑作”として反映できるでしょう。



5.公開
即日公開には200MBを超える動画ファイルを転送するための安定したインターネット接続が必要です。
プロジェクトスタート時はauのモバイルデータ通信カードを使用して同サイズのデータを送信しようと試みましたが、山間部では通信状態が不安定で断続的に接続が途絶えてしまい、画質と収録時間を縮小することでデータカードでも送信完了できる30MB以下のデータサイズでのアップロードで対応していましたが、HD720pの高画質に対応しているYoutubeのパフォーマンスを活かすために、今シーズンからはネットカフェからの転送に切り替えています。
なお、今年7月より従来のモバイル通信端末の機能とWiMAX接続機能を持った最新型データカードに切り替えましたが、当プロジェクトで利用したい地域へのサービスエリア拡大が進んでおらず、当面はネットカフェでの転送となりそうです。



>>収益モデル

1:協賛
当プロジェクトへの協賛は年間契約もしくは月極契約により「動画コンテンツ内のロゴ挿入およびプロダクトプレイスメント」とxpressjapan.comでの「バナーリンクと紹介ページ作成」を行うものです。
プロジェクトスタート当初より多大なるご支援をいただいているのはMUD OFF(三幸産業株式会社)様です。
まだまだ余裕がありますが最大でも5社程度に抑えたいと考えてます。
なお、今期途中よりスポーツランドSUGO様も動画コンテンツの冒頭にロゴ表示とxpressjapan.comでの紹介を行っていますが、金銭的な協賛ではなく同社主催イベントの「映像化権」とのバーター契約によるものです。


2:コンテンツ制作
モトクロスに関してはインディーズ制作ですが、エンデューロは全日本エンデューロ(JEC PROMOTIONS様)、JNCC共にDVDのマスターデータ制作を依頼されておりその制作費をいただいてます。xpressjapanとしての作品公開では、当方の制作方針を優先させていただいており、この契約による収益により報道的な役割も果たせていると考えています。


3:コンテンツ販売
2008年度をもって全日本モトクロスDVD制作販売を一度終了しましたが、収益モデルの一つとして2009年度よりあらたに「総集編」のみの制作販売を行っています。
2010年度も引き続き制作販売する予定ですがDVD作品としての収録内容、時間および発売本数をプレス製造に変更し価格改訂します。
また、JECとの契約により全日本エンデューロ選手権総集編の制作販売も行う予定です。こちらはそれほどの販売量を見込んでいないため詳細は未定です。
いずれも弊社ネット直販とAmazon.co.jpにて年末に発売予定です。その他の販売チャンネルは未定ですが、前作同様ダートフリーク様、ウエストウッド様に交渉予定です。


4:Google Adsense
Youtubeコンテンツパートナーの特典として作品へのポップアップバナーとチャンネル内のバナー広告が掲載されます。これらの広告はYoutubeの親会社でもあるGoogleが提供するAdwordsによるもので、同社との契約により収益の一部を受け取ることができます。
これは換言すれば個人のみなさんがプレーヤー内のバナーを”ただクリックするだけ”で、このプロジェクトの運営にご協力いただけることでもあります。またモーターサイクルスポーツのグローバルニッチな特性から日本国内だけでなく国外での視聴も増加傾向にあり、今後の有力な収益モデルと考えています。
そのためには「”世界で戦える”よりクオリティの高い、日本のオフロードモーターサイクルシーンへの興味を惹起させる作品」を提供することで再生回数を増やすことを目指します。


5:Fifth Element
現在、1-4に加えて第5の収益モデルを模索中です。
よいアイディアがありましたらどうぞご伝授ください。


>>4チャンネル展開中
1:Youtube http://www.youtube.com/user/xpressjapan
2010年6月よりコンテンツパートナーになりました。これによりYoutubeチャンネルとコンテンツ内にGoogleを代理店とするバナー広告、アドワーズ広告の挿入が可能になり、それらを視聴者がクリックすることで広告収益が発生し、その一部がGoogleよりxpressjapanに分配されます。
(※YoutubeはGoogleが展開するサービスです)
また、Youtubeには解像度1280*720pのHD規格(※最大1080pまで)でアップロードおよび公開されており、今年8月より10分から15分に公開できる動画の「尺」が増え、ひとつのコンテンツの構成に自由度が増しました。

xpressjapanは当初、以前より使用していたwestendfilmsアカウントにて公開していましたが、総合的なブランディングを推進するという戦術的観点から2009年8月30日に遅ればせながらxpressjapanアカウントを新規に取得。以降に制作したコンテンツはxpressjapanアカウントにて公開中で、westendfilmsアカウントもそのまま公開中です。

そして今月で1年が経ち、アップロードしたコンテンツ数は147作品(8月20日現在)動画再生回数が400,000回を突破しました。
なおwestendfilmsアカウントの動画再生回数も400000回を超えており、年内に累計1000000回を記録するかもしれません。
当プロジェクトのひとつのコンテンツで10000回に達することは希ですが、最も再生回数が多い「G-IMPACT highlights」は16000回を超え、その約半数が公開日から1週間以降にカウントされています。今でも一日に10回ほど加算されて、ユニークユーザー(初めて見る人)が8割ほどを占めています。
この作品、当プロジェクトに限らず、公開から日数を経てもなお、初めて視聴する人にとっては「最新作」であり、ネットに接続するだけでユーザー登録も必要とせず「いつでも」「どこでも」「だれでも」ニッポンのオフロードレーシングシーンに触れられる事実は、ワールドワイドウエブ(www)が地球上全てのオフロードモーターサイクルエンスージアストに与えた恩恵です。


2:Vimeo! http://vimeo.com/user3146391
Youtubeはオリジナル作品からTVコンテンツの違法アップロードまで玉石混淆のビデオ共有サービスであり、多様性と敷居の低さが人気を維持している理由のひとつではありますが、前述のテイストをアップグレードするにあたり、オリジナル作品のクリエーターとして同じ志を持つものが集う場所で公開することでスキルアップを図りたいと考えました。
Vimeo!はオリジナルコンテンツのみ公開できる動画共有サイトです。
こちらではxpressjapanとしてではなく制作者個人としてアカウント登録し、ロゴの表示やプロダクトプレイスメントといった広告を作品内に挿入することができないため、直接的なビジネス展開ではなく、純粋な作品発表の場として活用しており、最新作「MFJ MOTOCROS2010 part2」は8月20日現在の再生回数は609回を記録しています。


3:MPORA http://video.mpora.com/watch/5sc43cvGT/
北米を拠点とするYoutube、Vimeo!に対して、イギリス・EU諸国のヨーロッパを中心にユーザーを獲得しているMPORAはアクションスポーツ専門の動画共有サービスです。Vimeo!と動機は同じですがEU圏での展開を主眼としています。
最新作「MFJ MOTOCROS2010 part2」をYoutube、Vimeo!とともにMPORAでも公開していますが、意外と好評で8月20日現在の再生回数は927回。


4:USTREAM http://www.ustream.tv/user/xpressjapan
前述の3つのサービスとは異なり、USTREAMはライブストリーミング配信、つまり生放送を目的に試験導入しています。IA Shoot Outがテスト開催されたモトクロス第4戦SUGO大会のレース終了後記者会見で初回放送を行いましたが、告知が不十分であったため、ライブ配信で視聴したユーザーはわずか17人でした。
このときの”録画映像”はUSTREAMにて視聴可能で、8月20日現在の再生回数は877回です。
http://www.ustream.tv/recorded/7324383
なお、このライブストリーミング配信を行うためには安定して高速なネット接続が不可欠であり、現在プレスルームに無線LANと電源が確保されているスポーツランドSUGOと藤沢スポーツランド以外では不可能です。
しかしインフラとスタッフおよび機材さえ整えばレースそのもののライブ配信も可能であり、これもまたwwwが日本のオフロードモーターサイクルスポーツシーンにもたらす可能性の一つです。

次回「ぶっちゃけ篇」に続く

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